東條英機主任弁護人が語る知られざる東京裁判の内幕。
著者である清瀬一郎は、戦前、弁護士を経て政界入りした在野法曹界の重鎮です。
連合国による、日本の戦争犯罪を裁いた、極東国際軍事裁判=いわゆる東京裁判では、東條英機の主任弁護人を務め、大変有名になりました。
本書は、著者が東京裁判について見聞した事実を戦後回想したものです。
当初は、昭和四十年代に読売新聞に連載された回想記を、一冊の本にまとめたものです。
著者は弁護士ですので、当然法律家として東京裁判の国際法的な欠陥を突きました。
まず東京裁判の拠って立つべき国際法的な根拠が薄弱だと指摘します。
日本が戦争に踏み切った時点において、戦争そのものは国際法上「違法」ではなく、日本が敗戦した後に制定した「事後法」により、日本を裁こうとしていること。
これは「刑罰不遡及=後から制定された刑法を遡って適用してはいけない」の大原則に反する、と主張します。
また、ポツダム宣言を東京裁判の国際法的根拠としているが、ポツダム宣言でいう「無条件降伏」とは、「日本国軍隊の無条件降伏」を言っているのであって、「日本国政府の無条件降伏」を規定しているのではない……連合国側検察団は、不当な拡大解釈をしている、という主張です。
これらの清瀬の主張が正しいか否か、皆さんに本書を読んで、是非とも考えていただきたいと思います。
その他、法廷での各被告人達の態度や、東條英機が清瀬達に託した遺書の内容、いわゆるA級以外のBC戦犯について清瀬が助言した話など、東京裁判について様々な知られざるエピソードが語られています。