近衛文麿「青年宰相」と呼ばれた貴族政治家。

 

近衛文麿…「青年宰相」と呼ばれた男。

筒井清忠

近衛文麿

 ~教養主義的ポピュリストの悲劇~』

岩波現代文庫

    《内 容》

~屈指の人気政治家は
いかに名声を博し
いかに貶められたのか??~

戦前の人気政治家は、戦争の時代にいかなるリーダーシップを発揮したのか??

三度も宰相を務めながら、何故、日本を破局の淵から救えなかったのか??

近衛の栄光と挫折を、教養主義ポピュリズムとの連関から究明し、大衆社会状況下のマスメディア戦略に注目して考察した待望の書き下ろし。
岩波現代文庫オリジナル版

 (本書・端書きより)

     《解 説》

近衛文麿(このえ・ふみまろ)は、日中戦争が勃発した当時に内閣総理大臣を務め、また、日米開戦直前まで、やはり総理大臣として内閣を率いていた貴族(華族)政治家です。

日本の近代史…特に昭和前期を考える上では、避けて通ることのできない人物です。

近衛文麿(以下、単に近衛と表記)について書かれた書籍は、たくさんあるのですが、本書は、近衛の思想背景をなしていた、いわゆる「教養主義」と、彼が依って立っていた「ポピュリズム(大衆人気迎合主義)」をキーワードに、近衛の政治家としての半生を描いています。

著書は、戦前の新聞報道などを紐解き、マスメディアを通じて、大衆=国民の「近衛人気」が膨らみ、それが政治家としての期待感(「青年宰相」賞賛された)にまで高まったことを解き明かしていきます。

結果的に近衛は、その人気に押し潰され或いは振り回され、三度にわたり総理を務めながら、二つの戦争を阻止できなかったのです。

 

 

日本の近代史、また近衛文麿という貴族政治家を知りたい方に、本書を強く推薦いたします。

 

 

    《著者略歴》

つつい・きよただ

1948年(昭和二十三年)大分県生まれ。

京都大学文学部卒業。同大学院文学研究科博士課程修了。
専門は、日本近現代史・歴史社会学・日本文化論。
奈良女子大学助教授、京都大学教授を経て、帝京大学文学部教授現在。

主要著書に、
『日本型「教養」の運命』、『昭和十年代の陸軍と政治―軍部大臣現役武官制の虚像と実像』、『近代日本文化論』(以上、岩波書店)、『石橋湛山』『西條八十』、『新しい教養を求めて』(以上、中央公論社)などがある。

近衛文麿―教養主義的ポピュリストの悲劇 (岩波現代文庫)

近衛文麿―教養主義的ポピュリストの悲劇 (岩波現代文庫)