「日本帝国陸軍の中枢」陸軍参謀本部の栄光と盛衰。

 

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大江志乃夫著

『日本の参謀本部

中公新書

~霧名亜夜斗の「この本で歴史を勉強しなさい」~

    《内 容》

一人の軍事的天才の指揮能力を超える大組織になった近代の軍隊を運用する為に作られたのが参謀本部である。

そのスタッフである参謀は、政略と戦略、戦争目的と軍事力との関係について、明確な認識なしには十分な機能を発揮できない。
しかし、戦争の政治的目的を踏まえて戦略を策定する点で、日露戦争以後の日本の参謀本部は、理論・実践両面で有能とは言えなかった。
本書は、参謀本部の歴史をたどり、さきの大戦の敗因を探る。

    《解 説》

さきの戦争、すなわち日中戦争と太平洋戦争(当時の言葉では大東亜戦争)の敗因として、戦後、

「(陸軍の)参謀本部の立てた作戦が悪かった」

「参謀達が傲慢で愚かだったから負けたのだ」

と指摘されることが多いです。

では、その陸軍の「参謀本部」とは、いったいどのような組織だったのでしょうか??

「参謀」とはどのような職業軍人だったのでしょうか??

本書は、その参謀本部の誕生から崩壊までを学問的レベルを落とさずに、簡潔にまとめた本です。

日本陸軍参謀本部の弊害として、

「補給の軽視」

「情報の主観化」

「責任の所在の不明確」

「硬直化した官僚組織」

などが挙げられます。

例えば、部隊への補給・輸送を度外視して作戦を立案し、現地の部隊が弾薬不足や食糧難に陥ったり、
情報機関からもたらされる敵軍に関する情報や分析を軽視し、あまりにも主観的に部隊を指揮(「敵には、この川を渡河する能力はないはずだ」思い込み兵力配置を誤るなど)したあげく、結果大損害を被ったりたりすることが、しばしばありました。

これは、参謀の主流がいわゆる「作戦参謀」な為、「作戦至上主義」に陥ってしまったことが原因なのです。

また、現地軍司令官が凡庸で決断力に欠ける場合、いわゆる「幕僚統帥」が発生し、責任の所在が曖昧になったことも、大いなる弊害でありました。

 

 

日本陸軍の中枢、あるいは「日本的組織の弊害」に関心を抱く方々に、本書を強く推薦いたします。

日本の参謀本部 (中公新書 (765))

日本の参謀本部 (中公新書 (765))